型紙に合わせて切り出し終わった革の画像

こんにちは!
前回は革の下処理についてお話しました。
トコノールを使った床面処理や、染色による革の表情の変化など
革そのものとじっくり向き合う工程でした。

今回はいよいよ、レザークラフトらしさがぐっと増してくる「切断」の工程です。
「革を切る」と一言で言っても、実は下準備から切断方法まで、意外と奥深い作業なんです。
一緒にその流れを見ていきましょう!


荒断ち|まずは革の性質を見極める

革は天然素材。つまり、ひとつとして同じものがありません。
購入する革が「半裁」と呼ばれる大きなサイズであればあるほど、その個体差や部位による違いは顕著です。

たとえば、背中側は繊維密度が高くて硬め、腹側は柔らかいけれど伸びやすい――。
最初はあまり意識する必要はありませんが
こうした性質の違いが製品の仕上がり、使い心地に影響を与えます。
なので違いがあるんだな、と意識してみるのもいいかもしれません

半裁の部位の名称の説明画像
半裁の部位の名称の説明画像

さて、革の切断の最初の工程として行うのが「荒断ち」です。
これは型紙に合わせて最終的な形に切る前に、革から必要な部分をざっくりと切り出す工程です。

大きな革をそのまま扱うと取り回しが悪く、作業効率が落ちます。
荒断ちをして作業サイズを小さくすることで、切断精度も上がります。

荒断ち後の画像、型紙と革の大きさ比較
荒断ち後の画像、型紙と革の大きさ比較

革の部位を選び、狙った型紙すべてが収まるか確認できたら、いよいよ本格的な工程へ進みます。


革への転写|ケガく、という作業

荒断ちが済んだら、型紙を使って革に切断ラインを写していきます。
ここで大事なのは「型紙を絶対にずらさない」こと!

型紙がわずかでも動くと、線が歪んだり、サイズが変わったりして
完成後に「合わない……」なんて事態にもなりかねません。

固定方法は主に3つ。

  • 重しで型紙を押さえる方法
  • マグネットで革と型紙を挟み込む方法
  • クリップなどで型紙と革を挟む方法

どのやり方も一長一短であり、絶対の正解はありませんが
Vitaroではマグネットで固定する方法を採用しています。
理由は簡単で型紙を回してもズレにくく、作業性が高いからです。

マグネットで型紙を革に仮留めしている様子
マグネットで型紙を革に仮留めしている様子

ただし、強力なマグネットを使うと革に跡がつく可能性があります。
その場合はしっかりと養生をし、跡が残らないように工夫します。

そして型紙が固定できたら「丸ギリ」と呼ばれる先端が尖った工具で、型紙の縁をなぞっていきます。
この作業を「ケガく」と呼び、革の表面に浅いガイドラインを付けます。

この作業はペンでも代用できます。たとえば「銀ペン」という専用の筆記具も便利。
ただし、線が太くなりがちで、最終的な切断ラインが曖昧になってしまうことも。
床面に印をつける際には銀ペンでないと見えなかったりするので
こちらも使い分けが肝要です

そのため、私は銀面は丸ギリ・床面は銀ペンと使い分けています。
正確性を求めるなら、やはりケガく方が断然おすすめです。


穴あけの準備|縫い目も忘れずに!

型紙の外周を全てケガいたら、次は「縫い目の印」を付けます。
これも丸ギリで、今度は点を付けていくイメージ
革を貫通させないよう、表面に小さく印を残すだけでOKです。

型紙の縫い目の穴を型に転写している様子
型紙の縫い目の穴を型に転写

この印が後の「菱目打ち」で穴を開ける際のガイドとなります。
目立たない工程ですが、縫い目の均一さは完成後の美しさに直結するため
手間を惜しまずにしっかりと行いたい部分です。

縫い目の印が付け終わったら、転写は完了!
いよいよ切断に移ります!


革の切断|最も緊張する工程

いよいよ革の切断です。
私は主に「カッター」と「革包丁」を併用しています。

  • カッター:直線的なカットに向いている
  • 革包丁:細かいカーブや微調整が得意

道具に「正解」はなく、あくまで使い慣れたものを選ぶのがベストです。
ただし革包丁は最初は扱いづらいと感じると思いますが
使い慣れると加工の幅が格段に広がるので、ぜひ練習して使いこなせるようになりましょう

型紙に合わせて切り出し終わった革の画像
型紙に合わせて切り出し終わった革

すべての部品を丁寧に切断したら、一度パーツを並べて重ね、形状が正しいかどうかチェックします。
「なんとなく合ってる」ではなく、0.1mm単位でぴったり合うことが理想です。


この際に0.5mmを超えるズレがあった場合、この時点でパーツを切り出し直すか
修正できる算段をつけておく必要があります

もちろんこれは絶対ではなくVitaroでのやり方ですので、必ずしもそうする必要はありません
むしろ始めたてでこんな事をしていたら一向に作業が進まなくなります。

ですが、たかが0.5mmと思うかもしれませんが、このサイズのズレの修正は容易では無いのです…

問題なければ、先ほど付けた縫い目の印に沿って「菱目打ち」や「菱ギリ」で縫い穴を開けていきます。

この作業もズレると仕上がりに影響するため、慎重に。
革に対して垂直に打ち込むこと、打つ力を一定にすることがポイントです。

縫い穴を開け終わった革の画像
縫い穴を開け終わった革

切断まで完了したら…

さて、ここまでで革の切断と縫い穴の準備が完了しました!
いかがでしたでしょうか?

この切断の工程はレザークラフトの中でも「修正がきかない」作業の代表です。
切ってしまったら元に戻せないので、毎回手に汗握る瞬間です。

ですが、ここを乗り越えれば、あとは楽しい組み立てが待っています。
緊張が解け、気持ち的にも少しホッとできるポイントですね(笑)


次回はいよいよ組み立て!

次回は今回切り出したパーツを、いよいよ組み合わせて製品を形にしていく工程です。

いかに正確に切断しても、組み立てでズレたり、歪んだりしてしまっては意味がありません。
ですが逆に、精度の高い切断ができていれば、その後の工程もスムーズに進みます。

切断とは、作品の「骨格」を決める工程。
ぜひ丁寧に、時間をかけて取り組んでみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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