染色の比較用画像。青く染色中の革、濡れている状態で色が濃い

こんにちは!

前回の記事では、レザークラフトに欠かせない「型紙の作成と切断」についてお話ししました。
今回はその続きとして、革を扱う前に必要な「下処理」についてご紹介します。

「下処理」と言っても、あまり聞き慣れない言葉かもしれません。
簡単に言うと、革を切り出す前に、表面や裏面を整えたり、必要に応じて染色をしたりすることです。

一見地味に感じる作業ですが、ここを丁寧に行うことで作品の完成度が大きく変わってきます。
逆に言えば、ここをおろそかにしてしまうと、どんなに丁寧に縫っても
「安っぽい・雑に見える仕上がり」になってしまうことも……。

それでは、実際にどのような工程があるのか、順を追って解説していきます。


革の下処理で行うこと

今回ご紹介するのは、以下の3つの工程です。

  • 床面(裏側)の処理
  • 銀面(表側)の処理
  • 染色

それぞれの役割とやり方を、私自身の制作の流れとあわせてお伝えします。


床面の処理|革の裏側をなめらかにする

革には
表(銀面)と
裏(床面)があります。

表面はツルッとした質感で、製品の見た目にも大きく関わる部分。
一方の床面は、繊維がむき出しで、ザラザラ・モサモサとした質感をしています。
この床面をそのまま使ってしまうと、触れたものに繊維がついたり、見た目が粗くなったりすることも。

特に裏地を使わず、床面がそのまま見えるようなデザインの場合は、この処理がとても重要になります。

あくまで一例なので他にも様々な方法があります
私がよく使う方法は、「トコノール」という専用の仕上げ剤を使い、ガラス板で擦るというものです。

  1. トコノールを床面に塗る
  2. ガラス板やヘラで繊維を押しつけるように擦る
  3. 床面がツルッと光沢を帯びたら完了

この処理により、繊維が圧縮されて落ち着き、見た目も手触りもワンランクアップします。

床面処理は後で行うと、効率が悪かったり
そもそも構造上出来なくなってしまうこともあるため、革を切る前に必ず行うようにしています。


銀面の処理|表面にオイルや保護剤を入れる

革の表面処理については、「やらなきゃいけない」というわけではありませんが
私は染色前後に軽く保護や保湿を兼ねてオイルを入れることが多いです。

特に乾燥した季節や、乾きすぎてカサついた革を使う場合
軽くオイルを含ませておくだけで、発色がよくなったり、ひび割れを防いだりできます。

もちろん製品完成後にもオイルは入れますが、
床面の処理でもありましたが、レザークラフトは全体を通してやり直しがし辛いことが多々あります
そのため事前に入れておくのがベターです。


革の染色|ムラも味わいに変わる工程

革を生成り(ナチュラル)のまま使う方も多いですが、私はよく染色を行います。
自分の思い描いた色に染められることで、よりオリジナル感が増すからです。

ただし、染色はとてもムラが出やすく、難しい工程でもあります。

今回使用するのは、クラフト染料と呼ばれる扱いやすい水性の染料。
ポピュラーで手に入りやすいこともあり、私のような小規模制作にはぴったりです。

染色のポイントは以下の3つ。

  1. 革をあらかじめ湿らせておく
     → 乾いた革は一気に染料を吸ってしまうため、濡らすことで浸透を緩やかにし、ムラを抑えます。
  2. 少しずつ薄く塗り重ねる
     → 最初に大量の染料を入れると、その部分だけ色が濃くなりムラになります。
    何度かに分けて丁寧に塗るのがコツです。
  3. 乾燥と色の確認を繰り返す
     → 濡れている時の色と乾いた後の色では、印象が変わることがあります。
    一旦乾かしてから追加することで、より理想に近づけることができます。

ムラが出るのも手染めならではの味ですが、狙ったムラと予期しないムラは違うので
できるだけ丁寧に進めたい工程です。

一般的な水性の染料では染めている際には水分を含んでいるので、暗めの濃い色に見えますが
乾燥するとかなり明るくなります
そのため作成したい革の切れ端などで一度テストしてみるといいかもしれません
思ったよりも色が変わります


染色後の処理と乾燥

染色が終わったら、オイルを塗ったり、仕上げ剤で表面をコーティングしたりして
革の状態を整えます。これもやっておくと、完成後のツヤや手触りが大きく変わってきます。

また、忘れてはいけないのがしっかりとした乾燥です。

革は湿った状態だと柔らかく、乾燥とともに縮む性質があります。
水分が残っている状態で型紙通りに切ってしまうと、後でパーツ同士が合わなくなるという事態にもなりかねません。

私は、完全に乾くまで1日以上置いてから作業を再開するようにしています。
乾燥中は直射日光を避け、風通しのいい日陰で自然乾燥するのがおすすめです。


型紙へのメモも忘れずに

これらの工程は、一つでも忘れると後から戻れないものが多いため
私はあらかじめ型紙に処理内容を書き込んでおくようにしています。

作業に集中していると、うっかり忘れてしまうこともあるので、こうしたメモが意外と役に立ちます。


次回はついに革の切り出しへ

さて、ここまでで「型紙の作成」と「革の下処理」が終わりました。
いよいよ、次回は革を実際にカットしていく工程に入ります!

いかにもレザークラフトらしい工程が増えていくので、
少しずつ「作品を作っている実感」が湧いてくる頃かもしれません。

ぜひ、次回もお楽しみに。

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

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